転職理由の裏返しから転職軸を作る手順(不満を未来側の条件に変える)
初回面談で聞いた不満を、そのまま希望条件にしていないでしょうか。不満を裏返して転職軸に変える5ステップ、適性の因子別の言い当て例、矛盾する希望を一段上の軸でまとめる方法を、人材紹介会社のCA向けに整理しました。
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この記事の要点
「やりたいことは何ですか」と聞くと、「営業企画です」「PdMです」と職種名が返ってくる。初回面談ではよくある場面です。そのまま希望職種として受け取れば、求人検索のキーワードは決まります。ただ、その職種名が本人のやりたいことと一致しているとは限りません。
うちでは、候補者の希望を名詞ではなく動詞で見るようにしています。営業が好きかではなく、営業の中の何が好きなのか。QA(品質保証)が好きかではなく、仕組み化、品質改善、チーム支援のどの行為に熱量があるのか。ここまで戻すと、同じ職種名でも合う求人は変わります。
この記事では、職種名で答える候補者から動詞を引き出し、職業機能に翻訳して求人軸にするまでの手順を書きます。代表が前職で面談4,000名以上を担当した経験と、現在の自社の面談ナレッジから整理したものです。
年収を上げるにはマネージャーになるしかない。経験があるからQAで探すしかない。今まで営業だから営業マネージャーしかない。候補者が最初に言う希望職種は、こうした消去法から出ていることがあります。
本人は、それを自分の望みだと思って話しています。手段として握りしめているものが、目的の顔をしている状態です。そのまま求人を出すと、転職後に同じ不満が再発しやすくなります。
表面上はフィールドセールスでも、実態が既存顧客の活用支援やアップセル中心なら、機能としてはカスタマーサクセスに近い。表面上はPdMでも、実態が社内業務のディレクションと要件定義中心なら、事業会社のPdMとは違う可能性があります。
候補者は、自分の職種名に実務の中身まで含めて話します。聞く側がその略語をほどかないと、経験の評価も求人の当て方もずれます。
年収、働き方、職種には答えの型があります。一方で「何をしているときに力が出るか」は、普段言葉にしていません。だから最初の問いでは出てきません。
CA側に問いが用意されていないと、面談は条件のすり合わせで終わります。候補者は希望条件を話し、CAはその条件で検索する。この形だと、介在価値は弱くなります。
| 工程 | 担当 | 内容 |
|---|---|---|
| 適性検査の採点 | AI・仕組み | 回答から因子スコアを出す計算は固定のロジックで処理する |
| 面談前の仮説づくり | AI・仕組み | 職務経歴と検査結果から、潜在的な転職理由とキャリアパス候補の下書きを作る |
| 職種別の問いの用意 | AI・仕組み | 職種ごとに「どの行為に熱量があるか」を聞く問いを一覧にしておく |
| 面談での問いかけ | 人 | 仮説を断定せず仮説として置き、反応と熱量の差を見る |
| 検査と発話のズレの補正 | 人 | 検査結果より本人の発話を優先し、受検時の状態まで戻って再解釈する |
| 面談メモの整理 | AI・仕組み | メモから動詞と職業機能を抽出し、求人軸の候補として並べる |
| 希望職種への介入 | 人 | 中長期ゴールから見て、その職種が目的か手段かを判断する |
| 本人に返すシート | AI・仕組み/人 | 文章の下書きはAI、内容を読んで渡すかを決めるのは人 |
線を引いている理由は、AIの得意と不得意がはっきり分かれるからです。発言の整理、選択肢出し、文章化はAIが速い。一方でAIは、相談してきた人の現在の認知に同調しやすい性質があります。候補者が今見えている範囲で相談すれば、その範囲の中で最適化された答えが返ります。現状の延長を揺らす問いは、人が持つことにしています。
採点の扱いも分けています。適性検査のスコアは、自社で決めた計算式をそのまま処理する形にしました。AIは計算に触りません。数字と本人が面談で話した言葉を掛け合わせて、本人に渡せる文章にする部分だけをAIに任せています。採点はロジック、言葉はAI、という線引きです。
そして、材料を作るのは人です。面談メモに動詞が1つも残っていなければ、そこから職業機能は出てきません。メモが薄ければ、下書きも薄くなります。どれだけ仕組みを足しても、ここは代わりが効かないと考えています。事前準備の作り方は面談事前準備の事例にも整理しています。
最初に他社の選考状況を聞き、次に本人が認識している転職理由を聞きます。一通り出たら「他にはありますか」と足します。ここでは決めつけません。
見るもの・記録するもの。選考中の社数とフェーズ、顕在理由が出てきた順番、本人が使った抽象語。「ベンチャー感」「裁量」「スキルアップ」は、後で定義を取りにいくため、言葉のまま残します。
よくある失敗は、先に検査結果や仮説を話してしまうことです。話を聞かれないまま決めつけられた、と受け取られます。
職種名を聞いたら、その中の行為に戻します。営業なら、顧客課題を拾うのか、売り方を作るのか、関係者を巻き込んで前に進めるのか。業務改善なら、誰を楽にしたいのか、どの工程が好きなのか。
使う問いは3つで足ります。「その中で、どの行為に熱量がありますか」「過去に一番楽しかった場面は、何が良かったですか」「それは、褒められなくてもやりたいことですか」。外部発信に関心がある候補者には、名前が出なくても誰かの役に立つならやりたいかを確認します。承認欲求と貢献欲求が混ざりやすいためです。
記録するのは動詞です。整える、支える、前に進める、売り方を作る、仕組みにする。失敗例は、動詞を聞いたのにメモには職種名しか残っていない状態です。
動詞のままでは求人検索に使えません。そこで機能に分解します。カスタマーサクセスなら、サポート、オンボーディング、アップセルとクロスセル。PdMなら、デザイン理解、開発理解、ディレクション、事業接続、目標設計。人事なら、採用、育成、配置、制度、エグジットまで分けます。
見るのは4点です。誰を支援していたか。何を前に進めていたか。顧客、社内、外部関係者のどこに介在したか。成果は売上、品質、進行、成長、改善のどれか。
特殊な職歴ほど、業界名をそのまま求人軸にしないことが効きます。別の業界でも再現できる機能に戻すと、候補が広がります。
適性検査を使う場合は、高い因子を1つか2つだけ選びます。「この傾向の方にはこういうケースが多いのですが、いかがですか」と仮説で置きます。結果を長く読み上げません。
順番は、欲求の仮説、現職で起きやすいモヤモヤ、本人の確認、本人の言葉での転職理由、その裏返しとしての転職軸です。検査と発話がズレたときは、発話を優先します。受検時に現職への不満が強かったのか、設問を別の意味で取ったのかまで戻って再解釈します。
「チームが好き」は注意が必要です。チームでやること自体が好きな場合と、自分の考えを広げる手段として好きな場合があります。何が好きなのかを必ず聞きます。
最後に、5年後10年後にどうなっていたらワクワクするかを聞きます。言葉にできない場合は、現在のCANから届きそうなキャリアパスを5つほど並べ、どれに惹かれるか、どれは違うかを選んでもらいます。
これで求人軸が3層でそろいます。最初から持っていた顕在希望、潜在的な転職理由の裏返し、ゴール逆算で出した未来側の軸。入口の職種と到達したい職種は分けて提案します。年収を維持しながら染み出せる会社を探す、という形です。
記録するのは、選んだ選択肢と「これは違う」と言った選択肢、そして最低希望年収です。失敗例は、動詞まで聞いたのに、求人検索は元の職種名のままという進め方です。軸が広がった分は、推薦時の理由づけにも効いてきます(推薦の質の整理)。
「どの行為が好きですか」と聞いたのに、返ってきた「企画です」をそのまま記録してしまう。企画も名詞です。何を企画し、誰に届け、どこまで責任を持ったのかまで戻します。メモの欄に動詞を書く場所を作ると、聞き漏らしが減ります。
検査は受けたときのスナップショットです。当てる道具ではなく、面談を深くする材料として扱います。本人の反応が鈍いときに言い切ると、信頼が落ちます。「今のお話とは少し違って聞こえます」と出して、本人の言葉で更新します。
「ベンチャー感が欲しい」の意味は人によって違います。裁量なのか、意思決定の速さなのか、チーム感なのか、ユーザーに早く価値が届くことなのか。定義を取らないまま求人を出すと、面接で違和感が出ます。
やりたい動詞が見えても、未経験領域にそのまま行くと年収が下がることがあります。CAN、WANT、市場の現実の交点で軸を作ります。今の経験を入口にして、やりたい機能へ染み出せる会社を選ぶ形が現実的です。
成果志向が強い候補者は、正しそうな言葉を上手に話します。それが本音か、周囲の期待から来ているかは分かれます。初回で結論を出さず、過去のトップモーメントや、条件を下げても取りに行きたい経験を追加で聞きます。
| 体制・フェーズ | 最初にやること | 注意点 |
|---|---|---|
| 社員数名の紹介会社 | 主要な3職種だけ、動詞で聞く問いを3つずつ決めて毎回使う | 問いを増やすと面談が延びる。先にメモの型を決める |
| 10〜20名規模 | 面談メモに「動詞」「職業機能」の欄を足し、全員が同じ欄を埋める | 評価には使わない。本人が自分の面談を直す材料として置く |
| 事業会社の採用チーム | 募集要件を動詞で書き直し、面接の質問に反映する | 社内の職種名と市場の職種名のズレを先に確認する |
聞けます。検査は仮説の材料を増やすものですが、必須ではありません。過去に一番楽しかった仕事の場面と、その何が良かったのかを聞けば、動詞は出てきます。「褒められなくてもやりたいか」を足すと、want toとhave toが分かれます。検査がある場合も、答えではなく仮説として扱う点は同じです。
キャリアパスの選択肢を並べて、反応の差を見ます。たとえば営業経験者なら、スペシャリスト、カスタマーサクセス寄り、営業マネジメント、営業企画、事業開発の5つを出します。「どれが一番ワクワクしますか」「逆に、これは違うと思うものはありますか」の2問で、惹かれる方向が見えてきます。選ばなかった選択肢も材料になります。
軸を広げることと、応募を増やすことは別に扱っています。求人を見て応募するかを決めるのは本人です。合わなければ全部辞退してよい、と先に伝えます。過去に大量応募をすすめられた経験がある候補者ほど、ここで警戒します。自己決定感を守ったほうが、次の面談が前に進みます。
まず記録するものを1つだけ決めるところから始めると進みます。面談メモに「動詞」の欄を足し、候補者が熱量を持って話した行為を3つ書く。次の面談で、その3つが求人軸に反映されているかを見返す。この2つが回り出すと、職種名から始まった面談が、職業機能から組み立てる面談に変わっていきます。
人材紹介事業の戦略・現場・AI活用について、現在の課題をお聞かせください。
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