本文へ移動
Staneer Agent Sync

面談・キャリア支援

「やりたいこと」を名詞ではなく動詞で聞く手順(職種名を職業機能に翻訳する)

公開日:読了目安:約8分執筆:Staneer株式会社 代表取締役 渡邉 拓哉

この記事の要点

対象
初回面談の質を上げたい人材紹介会社のCA・RAマネージャー、事業会社の採用担当
できるようになること
職種名で答える候補者から動詞を引き出し、職業機能に翻訳して求人軸を3層でそろえられる
必要なもの
面談メモの型、職種別の問いのリスト、適性検査があればその結果

「やりたいことは何ですか」と聞くと、「営業企画です」「PdMです」と職種名が返ってくる。初回面談ではよくある場面です。そのまま希望職種として受け取れば、求人検索のキーワードは決まります。ただ、その職種名が本人のやりたいことと一致しているとは限りません。

うちでは、候補者の希望を名詞ではなく動詞で見るようにしています。営業が好きかではなく、営業の中の何が好きなのか。QA(品質保証)が好きかではなく、仕組み化、品質改善、チーム支援のどの行為に熱量があるのか。ここまで戻すと、同じ職種名でも合う求人は変わります。

この記事では、職種名で答える候補者から動詞を引き出し、職業機能に翻訳して求人軸にするまでの手順を書きます。代表が前職で面談4,000名以上を担当した経験と、現在の自社の面談ナレッジから整理したものです。

なぜ「やりたいこと」が職種名で返ってくるのか(3つの理由)

理由1:希望職種が「そうするしかない」から作られている

年収を上げるにはマネージャーになるしかない。経験があるからQAで探すしかない。今まで営業だから営業マネージャーしかない。候補者が最初に言う希望職種は、こうした消去法から出ていることがあります。

本人は、それを自分の望みだと思って話しています。手段として握りしめているものが、目的の顔をしている状態です。そのまま求人を出すと、転職後に同じ不満が再発しやすくなります。

理由2:職種名が、実務の中身を隠す略語になっている

表面上はフィールドセールスでも、実態が既存顧客の活用支援やアップセル中心なら、機能としてはカスタマーサクセスに近い。表面上はPdMでも、実態が社内業務のディレクションと要件定義中心なら、事業会社のPdMとは違う可能性があります。

候補者は、自分の職種名に実務の中身まで含めて話します。聞く側がその略語をほどかないと、経験の評価も求人の当て方もずれます。

理由3:条件と職種名は答えやすく、動詞は聞かれ慣れていない

年収、働き方、職種には答えの型があります。一方で「何をしているときに力が出るか」は、普段言葉にしていません。だから最初の問いでは出てきません。

CA側に問いが用意されていないと、面談は条件のすり合わせで終わります。候補者は希望条件を話し、CAはその条件で検索する。この形だと、介在価値は弱くなります。

仕組みに任せる範囲と、人が決める範囲

工程 担当 内容
適性検査の採点 AI・仕組み 回答から因子スコアを出す計算は固定のロジックで処理する
面談前の仮説づくり AI・仕組み 職務経歴と検査結果から、潜在的な転職理由とキャリアパス候補の下書きを作る
職種別の問いの用意 AI・仕組み 職種ごとに「どの行為に熱量があるか」を聞く問いを一覧にしておく
面談での問いかけ 人 仮説を断定せず仮説として置き、反応と熱量の差を見る
検査と発話のズレの補正 人 検査結果より本人の発話を優先し、受検時の状態まで戻って再解釈する
面談メモの整理 AI・仕組み メモから動詞と職業機能を抽出し、求人軸の候補として並べる
希望職種への介入 人 中長期ゴールから見て、その職種が目的か手段かを判断する
本人に返すシート AI・仕組み/人 文章の下書きはAI、内容を読んで渡すかを決めるのは人

線を引いている理由は、AIの得意と不得意がはっきり分かれるからです。発言の整理、選択肢出し、文章化はAIが速い。一方でAIは、相談してきた人の現在の認知に同調しやすい性質があります。候補者が今見えている範囲で相談すれば、その範囲の中で最適化された答えが返ります。現状の延長を揺らす問いは、人が持つことにしています。

採点の扱いも分けています。適性検査のスコアは、自社で決めた計算式をそのまま処理する形にしました。AIは計算に触りません。数字と本人が面談で話した言葉を掛け合わせて、本人に渡せる文章にする部分だけをAIに任せています。採点はロジック、言葉はAI、という線引きです。

そして、材料を作るのは人です。面談メモに動詞が1つも残っていなければ、そこから職業機能は出てきません。メモが薄ければ、下書きも薄くなります。どれだけ仕組みを足しても、ここは代わりが効かないと考えています。事前準備の作り方は面談事前準備の事例にも整理しています。

実務5ステップ

ステップ1:顕在理由を先に出し切ってもらう

最初に他社の選考状況を聞き、次に本人が認識している転職理由を聞きます。一通り出たら「他にはありますか」と足します。ここでは決めつけません。

見るもの・記録するもの。選考中の社数とフェーズ、顕在理由が出てきた順番、本人が使った抽象語。「ベンチャー感」「裁量」「スキルアップ」は、後で定義を取りにいくため、言葉のまま残します。

よくある失敗は、先に検査結果や仮説を話してしまうことです。話を聞かれないまま決めつけられた、と受け取られます。

ステップ2:現職の仕事を動詞に分解する

職種名を聞いたら、その中の行為に戻します。営業なら、顧客課題を拾うのか、売り方を作るのか、関係者を巻き込んで前に進めるのか。業務改善なら、誰を楽にしたいのか、どの工程が好きなのか。

使う問いは3つで足ります。「その中で、どの行為に熱量がありますか」「過去に一番楽しかった場面は、何が良かったですか」「それは、褒められなくてもやりたいことですか」。外部発信に関心がある候補者には、名前が出なくても誰かの役に立つならやりたいかを確認します。承認欲求と貢献欲求が混ざりやすいためです。

記録するのは動詞です。整える、支える、前に進める、売り方を作る、仕組みにする。失敗例は、動詞を聞いたのにメモには職種名しか残っていない状態です。

ステップ3:動詞を職業機能に翻訳する

動詞のままでは求人検索に使えません。そこで機能に分解します。カスタマーサクセスなら、サポート、オンボーディング、アップセルとクロスセル。PdMなら、デザイン理解、開発理解、ディレクション、事業接続、目標設計。人事なら、採用、育成、配置、制度、エグジットまで分けます。

見るのは4点です。誰を支援していたか。何を前に進めていたか。顧客、社内、外部関係者のどこに介在したか。成果は売上、品質、進行、成長、改善のどれか。

特殊な職歴ほど、業界名をそのまま求人軸にしないことが効きます。別の業界でも再現できる機能に戻すと、候補が広がります。

ステップ4:適性検査は高い因子だけを仮説で置く

適性検査を使う場合は、高い因子を1つか2つだけ選びます。「この傾向の方にはこういうケースが多いのですが、いかがですか」と仮説で置きます。結果を長く読み上げません。

順番は、欲求の仮説、現職で起きやすいモヤモヤ、本人の確認、本人の言葉での転職理由、その裏返しとしての転職軸です。検査と発話がズレたときは、発話を優先します。受検時に現職への不満が強かったのか、設問を別の意味で取ったのかまで戻って再解釈します。

「チームが好き」は注意が必要です。チームでやること自体が好きな場合と、自分の考えを広げる手段として好きな場合があります。何が好きなのかを必ず聞きます。

ステップ5:ゴール逆算で求人軸を3層にする

最後に、5年後10年後にどうなっていたらワクワクするかを聞きます。言葉にできない場合は、現在のCANから届きそうなキャリアパスを5つほど並べ、どれに惹かれるか、どれは違うかを選んでもらいます。

これで求人軸が3層でそろいます。最初から持っていた顕在希望、潜在的な転職理由の裏返し、ゴール逆算で出した未来側の軸。入口の職種と到達したい職種は分けて提案します。年収を維持しながら染み出せる会社を探す、という形です。

記録するのは、選んだ選択肢と「これは違う」と言った選択肢、そして最低希望年収です。失敗例は、動詞まで聞いたのに、求人検索は元の職種名のままという進め方です。軸が広がった分は、推薦時の理由づけにも効いてきます(推薦の質の整理)。

つまずきやすい型

動詞を聞いたつもりで名詞に戻している型

「どの行為が好きですか」と聞いたのに、返ってきた「企画です」をそのまま記録してしまう。企画も名詞です。何を企画し、誰に届け、どこまで責任を持ったのかまで戻します。メモの欄に動詞を書く場所を作ると、聞き漏らしが減ります。

検査結果を正解として押し切る型

検査は受けたときのスナップショットです。当てる道具ではなく、面談を深くする材料として扱います。本人の反応が鈍いときに言い切ると、信頼が落ちます。「今のお話とは少し違って聞こえます」と出して、本人の言葉で更新します。

抽象語を定義せずに求人軸にする型

「ベンチャー感が欲しい」の意味は人によって違います。裁量なのか、意思決定の速さなのか、チーム感なのか、ユーザーに早く価値が届くことなのか。定義を取らないまま求人を出すと、面接で違和感が出ます。

動詞は分解したが、入口求人に落ちない型

やりたい動詞が見えても、未経験領域にそのまま行くと年収が下がることがあります。CAN、WANT、市場の現実の交点で軸を作ります。今の経験を入口にして、やりたい機能へ染み出せる会社を選ぶ形が現実的です。

have toを1回で決め切る型

成果志向が強い候補者は、正しそうな言葉を上手に話します。それが本音か、周囲の期待から来ているかは分かれます。初回で結論を出さず、過去のトップモーメントや、条件を下げても取りに行きたい経験を追加で聞きます。

体制・フェーズ別の進め方

体制・フェーズ 最初にやること 注意点
社員数名の紹介会社 主要な3職種だけ、動詞で聞く問いを3つずつ決めて毎回使う 問いを増やすと面談が延びる。先にメモの型を決める
10〜20名規模 面談メモに「動詞」「職業機能」の欄を足し、全員が同じ欄を埋める 評価には使わない。本人が自分の面談を直す材料として置く
事業会社の採用チーム 募集要件を動詞で書き直し、面接の質問に反映する 社内の職種名と市場の職種名のズレを先に確認する

よくあるご質問

Q. 適性検査がなくても動詞で聞けますか?

聞けます。検査は仮説の材料を増やすものですが、必須ではありません。過去に一番楽しかった仕事の場面と、その何が良かったのかを聞けば、動詞は出てきます。「褒められなくてもやりたいか」を足すと、want toとhave toが分かれます。検査がある場合も、答えではなく仮説として扱う点は同じです。

Q. 候補者が職種名でしか答えないときはどうしますか?

キャリアパスの選択肢を並べて、反応の差を見ます。たとえば営業経験者なら、スペシャリスト、カスタマーサクセス寄り、営業マネジメント、営業企画、事業開発の5つを出します。「どれが一番ワクワクしますか」「逆に、これは違うと思うものはありますか」の2問で、惹かれる方向が見えてきます。選ばなかった選択肢も材料になります。

Q. 動詞で軸を広げると、紹介求人が増えて押し売りに見えませんか?

軸を広げることと、応募を増やすことは別に扱っています。求人を見て応募するかを決めるのは本人です。合わなければ全部辞退してよい、と先に伝えます。過去に大量応募をすすめられた経験がある候補者ほど、ここで警戒します。自己決定感を守ったほうが、次の面談が前に進みます。

まとめ

まず記録するものを1つだけ決めるところから始めると進みます。面談メモに「動詞」の欄を足し、候補者が熱量を持って話した行為を3つ書く。次の面談で、その3つが求人軸に反映されているかを見返す。この2つが回り出すと、職種名から始まった面談が、職業機能から組み立てる面談に変わっていきます。

関連するnote:【Claude Code×人材紹介】独自の適性検査から"キャリアシート"まで、AIで一気通貫にした話

タグ:初回面談キャリア面談職業機能

Staneer株式会社 代表取締役 渡邉 拓哉

渡邉 拓哉Staneer株式会社 代表取締役

ITエンジニア、人材紹介のキャリアアドバイザー、企業の採用担当・人事責任者を経てStaneerを創業。現役で人材紹介事業を運営しながら、自社の業務にClaude Codeを組み込む実践を続けています。本ブログの記事は、その実践と社内ナレッジをもとに作成しています。 会社・代表について / noteの実践記事

自社では、どこから始めるか。

人材紹介事業の戦略・現場・AI活用について、現在の課題をお聞かせください。

現場から始めるなら 人材紹介向けClaude Code研修 ↗