「やりたいこと」を名詞ではなく動詞で聞く手順(職種名を職業機能に翻訳する)
初回面談で「営業企画です」と職種名で答える候補者から、何をしているときに力が出るかを動詞で引き出し、職業機能に翻訳して求人軸にするまでの手順を、CA/RAマネージャー向けに5ステップで整理します。
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この記事の要点
初回面談で転職理由を聞くと、不満が並びます。年収が上がらない。裁量がない。意思決定が遅い。その不満を順番に希望条件へ直していくと、条件の一覧はできます。ただ、紹介できる求人はかえって絞れません。条件が増えるほど、どれが本当に外せないのかが分からなくなります。
私たちは、不満をそのまま条件にしないようにしています。不満は、過去に起きたことの結果です。裏返すと、未来側で満たしたい状態に変わります。「意思決定が遅い」が「ユーザーに価値が届く速さを取り戻したい」に変わると、同じ求人票の見え方が変わります。代表は前職で4,000名以上の面談を担当してきましたが、面談の温度が上がるのは、だいたいこの瞬間です。
この記事では、不満を裏返して転職軸に変えるまでの手順を書きます。適性の因子別の裏返しの例、矛盾する希望を一段上の軸でまとめる方法、面談メモに何を残すかまで入れています。
年収を上げたい、スキルアップしたい、働き方を変えたい。これらは目的ではなく、結果だと考えています。やりたいことに没頭した結果、スキルがつきます。スキルがついた結果、年収が上がります。会社に欠かせない人になった結果、働き方の自由度も上がります。
順番を逆に置くと、条件は満たせても、本人の納得は残りません。条件を聞いて求人を出すだけの面談は、本人が自分で検索してもできる作業に近づきます。
不満は、一人から複数出ます。聞いた数だけ条件を足すと、軸が散ります。そして、裏返した言葉が本人に当たっているかを、誰も検算しないまま進みがちです。
「裁量が欲しい」も中身が違います。ターゲット顧客の選定か、提案の組み立てか、価格や契約条件か、目標設計か。どの裁量が必要かを確定しないと、求人の検索条件にはなりません。
候補者の希望は、ほとんどが矛盾を含みます。年収は下げたくないが、未経験領域に挑戦したい。安定したいが、裁量も欲しい。フルリモートが良いが、チーム感も欲しい。
ここでAかBかを選ばせると、候補者は決めきれません。安定か適性かという二択にしてしまうと、どちらを選んでも後悔が残ります。必要なのは選ばせることではなく、両方を満たす一段上の軸を作ることだと考えています。
| 工程 | 担当 | 内容 |
|---|---|---|
| 事前情報の整理 | AI・仕組み | 事前アンケートと職務経歴から、顕在の転職理由・希望条件・温度感・希望時期を定型項目で埋める |
| 仮説の下書き | AI・仕組み | 適性の因子と経歴から、潜在転職理由の候補とキャリアパス案を複数並べる |
| 抽象語の定義取り | 人 | 「裁量」「ベンチャー感」「スキルアップ」が本人にとって何を指すかを聞く |
| 発話と見立てのズレの判断 | 人 | 検査結果より発話を優先し、受検時の状況まで確認して仮説を更新する |
| 矛盾を束ねる軸の決定 | 人 | AかBかではなく、両方を満たす入口と到達点を設計する |
| 軸の記録と求人の絞り込み | AI・仕組み | 確定した軸と避けたい条件を記録に残し、求人検索の条件へ落とす |
AIは、発言を整理して選択肢を並べることが得意です。一方で、相手のいまの認知に同調しやすい性質があります。候補者が「自分に見えている範囲」で相談すると、その範囲の中で最適化された答えが返ってきます。裏返しは、本人がまだ見ていない側に出る作業です。ここは人が担う前提で設計しています。
もう一つ人に残すのは、言葉と非言語のズレを読む部分です。「私は安定志向です」と話す方が、過去に挑戦した話をするときだけ熱量が上がることがあります。この差は、面談メモのテキストには残りません。断定的な自己認識は事実ではなく仮説として扱い、本当にやりたくないのか、過去の失敗から避けているのかを見分けます。
逆に、定型にできるところは徹底して定型にします。事前情報の転記、因子別の仮説の下書き、面談後の軸の記録と求人検索への反映は、毎回同じ形で回せます。面談の時間を、裏返しと矛盾の整理に使うためです。
顕在の転職理由を一通り話してもらい、「ほかにはありますか」と二度聞きます。この段階では深掘りも評価もしません。
記録するのは、本人の言葉そのままです。こちらの語彙に言い換えて書くと、裏返しの精度が落ちます。
よくある失敗は、最初に出た一つを掘り始めることです。本命は二番目、三番目に出てくることが多く、先に掘ると残りが出てこなくなります。
不満ごとに、嫌なのは職種そのものか、職種の使われ方かを分けます。役割の問題か、事業モデルの問題かも分けます。上司、文化、事業フェーズ、顧客、プロダクトのどこが合っていないかまで特定します。
ここで抽象語の定義を取ります。「ベンチャー感が欲しい」は、裁量なのか、意思決定の速さなのか、チーム感なのか、ユーザーに価値が届く速さなのかで、次に見る求人がまったく変わります。
よくある失敗は、事象を転職理由にしてしまうことです。組織統合や方針変更は事象です。転職理由は、その前後で仕事の中身がどう変わったかの中にあります。提案の裁量が減った、社内調整に時間が移った、という変化まで聞けて初めて軸になります。
現職の不満だけでなく、過去の入社理由と退職理由を時系列で聞き、裏返した言葉を並べます。会社ごとに「入社理由・退職理由・その裏返し」を1行ずつ残すと見やすくなります。
見るのは、繰り返し出てくる欲求です。毎回「自分で決められない」、毎回「人の役に立つ実感が薄い」。言葉は違っても同じ方向が何度も顔を出すなら、それが一番強い本音です。
よくある失敗は、一度きりの不満を軸に据えることです。反復しているもののほうが、はるかに確かな材料になります。
適性の見立てから、潜在の転職理由を仮説として返します。順番が大事で、顕在理由を聞き、仕事内容と経歴を聞いたうえで、「ここまでのお話に加えて、もう一つありそうです」と足します。先に結果を提示すると、決めつけられたと受け取られます。
私たちは、理念力・共感力・論理力・活発力・協働力の5因子で見ています。因子別の裏返しの例です。
見るのは本人の反応です。「言われてみれば、それです」と返ってきたら仮説を採用します。ズレたら、検査結果より発話を優先し、「検査ではこう出ていますが、お話だと逆にも聞こえます」と返して更新します。
よくある失敗は、結果を正解として押し切ることです。「チームが好き」も、仲間と一つの目標に向かうのが好きな場合と、自分の考えを広げる手段として好む場合があります。チームの何が好きなのかまで聞きます。
矛盾する希望は、二択にせず言い換えます。
そのうえで、入口の職種と到達したい職種を分けて提案します。未経験職種にいきなり移ると年収が下がりやすいので、入口は経験を活かせる職種にし、そこから染み出せる会社を選びます。
残す記録は3層です。最初から持っていた顕在の希望、裏返して出てきた潜在の軸、中長期ゴールから逆算した未来側の軸。あわせて「次も同じ使われ方をされたら、同じ悩みが起きないか」という再発防止の確認も書いておきます。
よくある失敗は、気づきで終わることです。抽象的なゴールは、必ず求人軸と次の行動に落とします。求人を出す期日、応募可否の振り分け、書類の更新までを面談の最後に握ります。
不満を聞くたびに条件が増え、求人が一件も残らなくなる型です。原因は、不満を並列の条件として扱っていることにあります。不満は足すのではなく、裏返して束ねます。繰り返し出てくる欲求を一つ決め、それ以外は優先順位の低い希望として分けて記録します。
適性の結果を正解として押し当て、本人の違和感を押し切る型です。受検時に現職へのストレスが強かった場合や、やりたいこととやらねばならないことが混ざって回答した場合は、結果と発話がズレます。ズレは外れではなく、精度を上げる材料として扱います。過去に一番楽しかった仕事と照合すると、どちらが本音か見えてきます。
安定か挑戦か、技術かマネジメントかを選ばせてしまう型です。選ばされた候補者は、決めきれないまま温度が下がります。「どちらかを捨てるのではなく、順番をつけるとどうなりますか」と聞くと、両立の形が出てきます。いますぐ両方は無理でも、2年後に両方を満たす入口なら選べます。
職種名が合っているので同じ職種を紹介し、入社後に同じ不満が再発する型です。嫌だったのが職種そのものではなく、職種の使われ方だったときに起きます。肩書きではなく、その人が実際に果たしている機能で見ると防げます。本人が時間を忘れて没頭していた作業は、肩書きの外側にあることが珍しくありません。
| 体制・フェーズ | 最初にやること | 注意点 |
|---|---|---|
| 少人数の紹介会社(CA1〜3名) | 面談メモに「不満」「裏返した軸」「本人の反応」の3欄を作り、全面談で埋める | 欄を増やしすぎない。3欄だけなら面談中でも書ける。反応が薄い仮説は軸に採用しない |
| 10〜20名規模 | 因子別の裏返し例を1枚にまとめて共有し、言い当ての一言をロープレで練習する | 型を正解として押しつけない。どの問いで見え方が変わったかをメンバーから集め、組織の資産にする |
| 事業会社の採用チーム | 面接で聞いた転職理由を裏返し、その軸が自社で満たせるかを確認する | 自社の魅力づけより先に、不満の対象が役割か事業モデルかを特定する。満たせない軸は無理に埋めない |
現職の批判をしたくない方は一定数います。その場合は、不満ではなく時間配分の変化を聞いています。「以前は何に一番時間を使っていましたか」「いまはどう変わりましたか」。この差分には、本人が失った仕事体験が出てきます。過去の退職理由を時系列で聞くと、同じ方向が見えることもあります。
できます。材料は3つあります。過去の退職理由の反復、一番楽しかった仕事の中身、現職で無意識に引き受けている役割です。この3つを並べると、因子の見立てに近い仮説が立ちます。検査は仮説を補強する道具で、なくても手順は回ります。ただし仮説の精度は落ちるので、本人の反応を見ながら更新する前提で使います。
軸を曲げて手持ちの求人に寄せることはしません。まず、本人が必要としている環境条件を具体化します。そのうえで、入口の職種を広げるか、到達までの順番を分けるかを一緒に決めます。いますぐの転職より、現職を続けて実績を作る順番のほうが近道になる方もいます。その整理も面談の成果として扱っています。
明日からできることは、面談メモに「不満」「裏返した軸」「本人の反応」の3欄を足すことです。1週間分たまると、裏返しが当たっている面談と、条件リストで終わった面談の違いが見えてきます。そこから、自社の言い当ての型を作っていけます。
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