求人ごとに推薦コメントを付ける手順(候補者が応募先を選べる情報設計)
求人紹介の段階で、求人1件ずつに「なぜ合うか」の推薦コメントとおすすめ度を添える運用をまとめました。コメントの型、仕組みに任せる範囲と人が決める範囲、実務5ステップ、つまずく型まで、人材紹介会社のCA・マネージャー向けに書いています。
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この記事の要点
求人紹介の精度は、面談で何を聴けたかよりも、聴いたことをどう記録したかで決まる場面が多いと感じています。面談中は本人の話に深く入れていても、残った記録が「職種」「希望年収」「勤務地」の数行だと、求人を絞る段階で手がかりが足りなくなります。
私たちは、候補者の軸を2つに分けて書くようにしています。やりたいこと(正の軸)と、避けたいこと(負の軸)です。この2つは、使われ方がまったく違います。正の軸は求人を「探す」ための材料で、負の軸は「落とす」ための材料です。同じ欄に混ぜて書くと、どちらの用途にも使えません。
この記事では、正と負を分けて記録し、求人票の読み方と優先順位に反映するまでの手順を書きます。自社で求人検索の仕組みを作り、出てきたリストへの評価を溜めて改善してきた中で、精度をいちばん大きく動かしたのがこの分け方でした。
候補者に送る求人リストを見ながら、「悪くはないが、この人に出したい並びではない」という状態になっていないでしょうか。件数は揃っているのに、本人の顔が浮かばない。こうなるときは、集め方ではなく軸の記録の仕方に原因があることが多いです。
希望欄に「SaaSの事業会社、できれば営業色が薄いところ」と書いてあるとします。前半は探す条件、後半は落とす条件です。ところが1行にまとまっていると、検索するときは前半だけが使われ、後半は頭の中にしか残りません。担当が代わったり、数週間空いたりすると、後半は消えます。
職務経歴に2つの機能が入っている人は珍しくありません。企画を担いながら制作のディレクションもしてきた、というような形です。それなのに検索では先頭の肩書ひとつだけを軸にしてしまう。すると、もう一方の機能で出ている求人がまるごと視界から消えます。自社の記録でも、取りこぼしの第一の原因はこの早合点でした。
「この環境は繰り返したくない」という話は、面談でいちばん熱量が出る部分です。ただ、それが検索条件や除外条件に変換されないまま終わると、リストには本人が明確に嫌だと言った求人が並びます。評価の低い求人を後から分析すると、業界共通のNGよりも、その候補者固有の「避けたい」が理由の筆頭に来ることが多いです。
| 工程 | 担当 | 内容 |
|---|---|---|
| 面談メモからの軸の抽出 | AI・仕組み | 正の軸(職業機能・業界・フェーズ)と負の軸(避けたい環境・過去の不満)を別項目として取り出す |
| 正の軸の表記展開 | AI・仕組み | 1つの軸を、求人票で実際に使われる略語・カタカナ・英字表記に広げる |
| 条件の機械判定 | AI・仕組み | 必須要件、年収レンジ、勤務地、リモート頻度、対象年齢を求人票と突き合わせる |
| 横断検索と名寄せ | AI・仕組み | 複数の求人プラットフォームを横断し、同じ会社の重複をまとめて並べる |
| 負の軸の線引き | 人 | どれを「外す」、どれを「残して確認する」に置くかを決める |
| 優先順位の確定 | 人 | 正の軸の順番と、本人に説明できる応募理由が立つかを判断する |
| 提案と落としの伝え方 | 人 | なぜこの求人なのかを、転職理由とつないで手渡す |
線引きの基準は「変換か、決定か」です。軸を検索語に広げる、条件を突き合わせる、重複をまとめる。ここは手数が多いだけで、判断そのものは含まれていません。丁寧にやるほど時間を食い、忙しいと雑になる工程なので、仕組み側に寄せています。
一方で、負の軸をどこまで厳しく当てるかは人が決めます。「営業色が強いのは避けたい」と言われたとき、営業要素が少しでもある求人を全部外すのか、主務が営業のものだけを外すのか。この幅の取り方で結果が大きく変わります。候補者の表情や言い方まで含めて聴いた人でないと、正しい幅は決められません。
優先順位の確定も人に残しています。並んだ求人の中から「この人には、なぜこれなのか」を選び取る部分です。材料を比べやすい形まで揃えるのは仕組み、そこから先の選定と伝え方は人。この順番で分けると、人が使う時間が判断だけに寄っていきます。
会社の中での職種名ではなく、実務で何を担っていたかで書きます。社内の呼称がフィールドセールスでも、実態が既存顧客の深耕・導入支援・利用促進であれば、カスタマーサクセスの機能として探す余地があります。
記録するのは、各社で担った機能、担当範囲、成果の3点です。経歴に2つ以上の機能があれば、両方を軸として残します。「AとBの経験者」なら、軸はAの系統とBの系統の両方です。
よくある失敗は、面談メモの冒頭に書いた肩書だけを軸にしてしまうことです。もう一方の機能で出ている求人が、軸と関係ないものとして自動的に落ちていきます。
「営業色が強いのは気が進まない」「総務まわりから始まるのは違う」「兼任で何でも屋になるのはもう繰り返したくない」。こうした発言を、要約せずそのまま残します。
材料は転職理由と、前職の不満です。面談で「それはちょっと」と言葉が止まった話題も、負の軸の候補になります。退職理由の裏返しが、そのまま避けたい環境になっていることが多いです。
よくある失敗は、「カルチャー重視」のような抽象語に丸めてしまうことです。丸めた瞬間に、求人票の記述と突き合わせられなくなります。
外す条件は、満たさなければ提案しないものです。必須要件に候補者の経歴にない業界・職種・資格が入っている、求人の年収上限が最低希望を下回る、フルリモートが必須なのに不可、本人が明言した避けたい環境そのもの。ここは機械的に落とします。
残して確認する条件は、懸念として記録するものです。希望年収には届かないが最低希望には届く、出社頻度が希望より少し多い、希望職種そのものではないが中長期のゴールには近い、必須要件は満たすが歓迎要件が弱い。これらは次回の面談で確認する論点として持ちます。
よくある失敗は、迷ったものを全部「要確認」に置くことです。確認待ちが全体の7割を超えたら、仕分けができていない合図だと考えています。
軸には順番を付けます。第1希望の機能で探し切ってから、第2、第3へ移る。勤務地も同じ考え方です。「大阪・京都>フルリモート」であれば、まず大阪か京都で探し、次にフルリモートで探します。3つを同時の必須条件にはしません。
展開するときは、代表的な語を3〜4個に絞って段階的に投げます。複合語の完全一致に寄せすぎると、言い回しの違いだけで取りこぼします。保存する件数は40〜50件を目安にし、軸が広い人で100件程度までにしています。
よくある失敗は、思いついた語を一度に並べて検索することです。件数は増えますが、どれが軸ど真ん中なのか分からなくなり、結局あとから人が全部読み直すことになります。
リストが出たら、残ったものより先に落ちたものを見ます。どの条件で何件落ちたのかを内訳で確認する。ひとつの条件だけが極端に多ければ、その条件の設定を疑います。
同時に、本人が明言したNGに当たる求人が残っていないかを見ます。負の軸の言葉をそのまま検索して、1件でも引っかかれば設定のミスです。
よくある失敗は、出てきたリストだけを眺めることです。取りこぼしの多くは、条件で落ちたのではなく、そもそも検索語に入っていなかったために最初から存在しません。これは出力を見ているだけでは見つかりません。
いちばん損失が大きい型です。「フロント側はもう触りたくない」と明言している人に対して、近い職種だからという理由で、その語を検索語側に入れてしまう。結果として、本人が明確に避けたいと言った求人が上位に並びます。自社の記録でも、90件のうち17〜21件が明示NGで埋まった例がありました。
対処はシンプルで、負の軸に出た言葉は除外側にだけ置き、検索語やタイトル条件には入れないことです。出力後に、その語で保存リストを検索して確認します。
「【広告運用の経験者歓迎】コンテンツマーケター」のような求人は、前置きに除外語が入っていても本体は軸ど真ん中です。除外語を素直に当てると、こうした求人がまとめて消えます。
対処は2つあります。除外は「その職種が主務のとき」だけ効かせること。そして、軸の語がタイトルに入っている求人には除外を適用しないことです。既定の除外リストをそのまま流用するのも危険で、「第二新卒歓迎」のような歓迎条件を制限条件と取り違えて落としてしまいます。歓迎は限定ではありません。
マーケター、ディレクター、編集者、プロデューサー、エンジニア。こうした汎用語そのものが軸になっている候補者では、機械的な分類が軸ど真ん中の求人を軸外として弾くことがあります。実際に、223件のプールから200件超が落ちた例がありました。
対処は、候補者の軸が汎用語のときに限り、その同義語を「常に軸として扱う語」として事前に列挙しておくことです。
ある求人を勤務地の条件で外したのに、同じ構造の別の求人は残っている。この不揃いが起きると、リスト全体の信頼が落ちます。優先度の意味が担当ごとにずれていることが原因です。
対処は、ひとつのパターンで1件を落としたら、同じパターンの求人をすべて同じ扱いにすること。判定後に、同種の求人が別の段に混ざっていないかを一度だけ走査します。
| 体制・フェーズ | 最初にやること | 注意点 |
|---|---|---|
| CA1〜3名の紹介会社 | 面談メモに「避けたいこと」の欄を1つ足す。希望条件の欄とは必ず分ける | いきなり仕組み化しない。3〜5人分たまってから共通パターンを抜き出す |
| 10〜20名規模 | 外す条件と残して確認する条件の線引きを、会社として1枚にまとめる | 担当ごとに幅が違うと、同じ求人が人によって残ったり落ちたりする。四半期に一度は突き合わせる |
| 事業会社の採用チーム | 自社の求人票を、負の軸の言葉で読み直す。出社頻度・裁量・兼任範囲を明記する | 書いていない項目は、候補者側で懸念として扱われる。曖昧な表記は確認待ちを増やす |
転職理由の裏返しから取ります。いま何が起きていて、何を変えたくて動いているのか。その話の中に、負の軸はほぼ必ず含まれています。「特にない」は、まだ言葉になっていないだけのことが多いと考えています。これまでで一番きつかった時期と、その理由を聴くと出てきやすいです。
本人が明言したものだけを「外す」側に置いています。推測で広げると、本命の求人が落ちます。判定は「その要素が主務かどうか」で分け、少しでも含まれていれば外す、という当て方はしません。外した理由は必ず一緒に残し、あとから戻せる状態にしています。
提案に反応が返ってきたタイミングです。「これは違う」と言われたときの理由が、そのまま負の軸への追記になります。逆に強く食いついた求人があれば、その共通点が正の軸の精度を上げます。2回目以降の面談で、前回の記録を本人と一緒に読み直すのも有効です。推薦の段階で軸がずれていると、理由も書けなくなります(推薦文の質を上げる考え方もあわせてご覧ください)。
まず明日からできるのは、面談メモに「避けたいこと」の欄を1つ足すことです。希望条件の欄と分けて、本人の言い回しのまま残す。それだけで、次に求人を探すときの手がかりが変わります。仕組みを入れるかどうかは、そのあとで判断しても遅くありません。
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