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AI活用の基礎

最初にAI化する業務を選ぶ手順(頻度・時間・判断の重さで並べる)

公開日:読了目安:約9分執筆:Staneer株式会社 代表取締役 渡邉 拓哉

この記事の要点

対象
AI化の着手順を決めたい人材紹介会社の経営者・CA/RAマネージャー、事業会社の採用担当
できるようになること
工程別の候補を頻度・1件あたりの時間・判断の重さで並べ、最初に着手する1業務と、やらない業務を決められます
必要なもの
2週間分の業務時間の記録、工程ごとの発生件数、確認役を担う担当者1名

「AI化したい業務を挙げてください」とお聞きすると、候補は10個くらいすぐ出てきます。スカウト文面、推薦文、面談前の準備、選考管理、求人票。どれも手間がかかっていて、どれも「できたら楽になる」。それなのに、そこから先の順番が決まらない、という状態になっていないでしょうか。

弊社も同じところで止まりました。順番を決める基準を持たずに話すと、議論は「どれが派手か」「どれが難しそうか」に寄ります。その結果、いちばん手強い業務から着手して止まる、という失敗を一度やりました。

いま弊社では、候補を3つの軸で並べてから1つ選んでいます。毎日発生しているか(頻度)、1件にどれくらいかかっているか(時間)、間違えたときに誰に影響するか(判断の重さ)。この3つで並べると、最初に触るべき業務はかなり自動的に決まります。本記事では、その並べ方と、意図的に外している業務を工程別に整理します。

なぜ最初のAI化で迷うのか(3つの理由)

理由1:候補が「大きい業務名」で並んでいる

「推薦業務」「面談準備」といった粒度で候補を並べると、比べられません。範囲が大きすぎて、所要時間も確認方法も見積もれないからです。

弊社では、候補を「入力・出力・確認者」が言える単位まで割ります。たとえば「推薦業務のAI化」ではなく、「面談メモと求人票から推薦理由を下書きし、CAが確認する」まで。ここまで割ると、必要な情報が揃うか、誰がどの基準で見るかが判断できます。

理由2:どこに時間が使われているか、数字で見えていない

次にどの業務をAIに任せるかを決めるには、いまどこに時間が使われているかが見えている必要があります。感覚ではなく、記録で。弊社はここが長く曖昧でした。

アシスタントの稼働はスプレッドシートの稼働票で管理していましたが、忙しい日ほど終業時に開かれず、数日後にまとめて書くので精度が落ちる。しかも集計は手作業でした。結局、社内の稼働記録そのものを仕組みに置き換えました。楽になっただけでなく、どの業務に時間が積まれているかが初めて見える状態になりました。

理由3:判断の重い業務から手を付けてしまう

AI化の議論で盛り上がるのは、面接対策やクロージングのような、成果に直結する工程です。ところがここは、候補者本人も言語化できていない不安や熱量を扱う領域です。

人の判断が重い工程に最初に手を付けると、出てきた結果の確認に時間がかかります。確認が重いと現場は使わなくなり、元の手順に戻ります。弊社は「サボっても今日は何も起きない」種類の業務、つまり守りの工程から渡すようにしています。

仕組みに任せる範囲と、人が決める範囲

工程 担当 内容
初回面談前の準備 AI・仕組み 事前アンケートの回収状況の管理、回答と経歴からの仮説整理、当日の質問案づくり
初回面談での深掘り 人 何に悩んでいそうかを掴む、どの問いで本音に近づけるかを決める
面談後の整理 AI・仕組み 面談メモの要約、必須ヒアリング項目の抜け漏れ検知、希望条件とNG条件の構造化、管理システムへの入力
求人の絞り込み AI・仕組み 求人票の要点整理、候補者条件とのマッチング仮説、希望と落としの比較表
紹介するかの判断 人 転職理由と企業の魅力が本当に接続しているか、企業側に推薦する意味があるか
求人ごとの推薦コメント AI・仕組み(下書き) 「なぜこの人に合うか」の一言コメントとおすすめ度の案、合わない求人の取り下げ理由
面接対策資料 AI・仕組み 想定質問、転職理由と志望動機の一貫性チェック、懸念点の抽出
対策面談 人 候補者が自分の言葉で話せるか、キャリアゴールに熱量があるか
選考ステータス管理 AI・仕組み 選考連絡の横断チェック、ステータス更新、面接確定分のカレンダー登録、前日からの差分共有
候補者への送信 人 下書きの確認と送る判断、予約リンクを使わない相手の個別調整
意思決定の支援 人 面接後の感情の変化、不安・迷い・家族要因・現職残留要因の把握、最後の判断

線引きの基準は1つです。合理はAIに、熱量と確定は人に。選考の動きを漏れなく拾って並べる作業は合理の側なので仕組みに渡します。その一覧を見て「今日、誰に向き合うか」を決めるのは人の側に残します。

もう1つ、AIの出力を結論にしない、というルールを置いています。AIは仮説を出すところまで。候補者の本音や意思決定の軸は、人が問いと観察で検証します。稼働記録の修正でも同じで、AIが修正案を組み立て、人が反映を押したときだけ確定する形にしています。

工程表の右側(人の列)が、最初のAI化で触らない業務でもあります。やる業務を決めるのと同じ手間をかけて、やらない業務を明文化しておく。これをしないと、提案が「面接以外は全部自動化」のように膨らみ、定着しなくなります。

実務5ステップ

ステップ1:2週間、工程ごとに時間を記録する

まず、いまの時間の使い方を記録します。分類は増やさず、5〜6個で十分です。候補者対応、求人探し、書類作成、選考管理、社内のやりとり、その他。

見るものは2つ。工程ごとの発生件数と、1件あたりの所要時間です。よくある失敗は、終業時や月末にまとめて思い出して書くこと。人は8時間前の作業を正確に思い出せません。記録する負荷は、記憶が要らない「その瞬間」に置きます。

ステップ2:頻度・時間・判断の重さで並べる

記録が溜まったら、候補を3軸で並べます。毎日発生しているか、1件に時間がかかっているか、間違えたときの影響が社内で止まるか。

上位に来るのは、たいてい地味な守りの業務です。選考ステータスの更新、応募の一次対応、求人票の作成、集計。どれも「全員がやるべきで、誰もやりたくない」側にあります。見るものは、順位ではなく外した理由です。人の判断が重いと判断して外した工程は、その理由を1行で残します。

ステップ3:1業務を「入力・出力・確認者」に切り直す

選んだ1業務を、試せる単位まで割ります。入力(面談メモ、求人票、経歴)、出力(下書き、一覧、更新後のステータス)、確認者(誰がどの基準で見るか)の3点が言えるまで細かくします。

ここで必要な情報が揃わないなら、着手対象を変えます。よくある失敗は、入力の準備を人が頑張る前提で設計してしまうこと。毎回ファイルを集め直す設計は続きません。

ステップ4:2週間でクイックウィンを1つ出す

着手から2週間を目安に、時間が減ったと目に見える成果物を1つ出します。弊社の支援でも、面談前のブリーフィング1本や、朝に選考の差分が揃っている状態のように、小さく1つに絞ります。

見るものは、成果物が現場の日常ツールに届いているかです。チャットツールやスプレッドシートに出ていれば使われます。使うために毎回別の画面を開く設計だと、忙しい週に止まります。成果が先に見えないと、現場は覚える理由を持てません。

ステップ5:確認と修正の負荷まで含めて測る

生成が速くても、誤りの確認と修正が重ければ、工程全体は軽くなりません。1件ごとに、作成・確認・修正の時間と、事実の誤りや抜けを併記して記録します。

そのうえで4つを見ます。対象工程のうち仕組みを通った件数の割合、着手前との所要時間の差、現場が自分で直せた回数、支援側への質問数の推移。質問が減らない、同じ質問が繰り返される、成果物が日常ツールに届いていない。このどれかが出ていたら、ステップ3に戻って工程の切り方を変えます。

つまずきやすい型

派手な工程から始めてしまう型

面接対策やクロージングは成果に直結するため、最初の候補に挙がりやすい工程です。しかし人の判断が最も重い領域でもあります。

結果の確認に時間がかかり、現場が「自分でやったほうが早い」と戻ります。対処は、同じ工程の中で準備だけを切り出すことです。資料づくりは渡し、対策面談そのものは人に残します。

生成の速さだけで評価してしまう型

試した直後は、出力が出てくる速さに驚きます。そこで評価を止めると、確認と手直しの時間が見えません。

対処は、最初の記録に「確認」と「修正」の欄を必ず置くことです。案件の難易度が違う場合は、その条件も残します。比べる相手は、従来の手順を同じ基準で測った数字です。

全員に覚えさせようとする型

研修を全員に受けさせる形から始めると、コストが高く、成果が薄くなります。操作に不安がある人に操作を教えるのが、いちばん重い道筋です。

対処は、社内のチャンピオンを1〜2名に絞ることです。その1名が自分で直せる状態を目標に置き、他のメンバーは成果物の画面で使う。弊社も、代表が作り、非エンジニアのアシスタントが画面で使う形で回しています。

使わなくても回る場所に置いてしまう型

いちばん多いのがこれです。作ったものが業務フローに組み込まれず、使わなくても仕事が回る。この状態だと、伴走しても元の手順に戻ります。

定着しない原因は、現場の苦手意識ではなく設計です。対処の相手は現場より先に経営者で、置き換える工程と測る指標を先に決めます。経営者が数字を見ていないことも、戻るサインの1つです。

体制・フェーズ別の進め方

体制・フェーズ 最初にやること 注意点
1〜3名の紹介会社 自分の時間を2週間記録し、毎日発生する社内完結の守りの業務を1つ選ぶ 候補者に直接届く文面より、社内で完結する工程が先。確認役が自分1人になるため、確認が軽い工程から始める
10〜20名規模 工程を1つ決め、担当1名と確認基準を先に決めてから着手する 全員研修から入らない。1名が自分で直せる状態を作るほうが速く、支援が抜けた後も続く
事業会社の採用チーム 責任者と「置き換える工程」「測る指標」「使わないと回らない状態」を先に決める 現場に開発環境を覚えさせない。現場が触るのは成果物。候補者への連絡は下書きまでにして、送信は人が確認する

規模が小さいほど、最初の1つは社内で完結する工程に寄せるのが安全だと考えています。確認する人が自分しかいないので、外に出る成果物から始めると、確認の負荷が全部自分に乗ります。

規模が大きい場合は、工程の選定より先に、評価と業務フローへの組み込みを決めます。ここが決まっていないと、どれだけ良いものを作っても使われません。

よくあるご質問

Q. 時間の記録から始めると、着手が遅くなりませんか?

記録と着手は同時に進められます。明らかに毎日発生していて、社内で完結する業務が1つ見えているなら、先に着手して構いません。記録の目的は1つ目を決めることではなく、2つ目・3つ目の順番を感覚で決めないことにあります。弊社も、稼働の記録を仕組みにしたことで、次に渡す業務を数字で選べるようになりました。

Q. 判断の重い業務は、ずっとAI化しないままですか?

工程をまるごと外すのではなく、準備と確定を分けます。面接対策なら、想定質問や一貫性のチェック、懸念点の抽出までは仕組み側に渡せます。残すのは、候補者が自分の言葉で話せているかを見て、本番直前に伴走する部分です。AIは仮説を出し、人が関係性の中で検証する、という順番は変えないようにしています。

Q. 社内にAIに詳しい人がいません。何人必要ですか?

全員が詳しくなる必要はないと考えています。設定や修正まで触るのは1〜2名で足り、他のメンバーは出てきた成果物で仕事をします。最初に決めるのは人数ではなく、その1名の卒業条件です。支援を受ける場合も、「自分で直せた回数」が増えているかを指標に置くと、依存したままの状態を避けられます。

まとめ

次の一歩は、今週から2週間、工程ごとの発生件数と1件あたりの時間を記録することです。分類は5〜6個で足ります。記録が溜まったら、上位3つを並べ、人の判断が重いものを外して1つに絞る。選び方の観点をもう少し細かく確認したい方は少人数の人材紹介会社は、どの業務からAI化すべきかも合わせてご覧ください。自社の工程に当てはめた設計はAI活用・内製化支援でご相談いただけます。

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タグ:AI活用業務設計優先順位

Staneer株式会社 代表取締役 渡邉 拓哉

渡邉 拓哉Staneer株式会社 代表取締役

ITエンジニア、人材紹介のキャリアアドバイザー、企業の採用担当・人事責任者を経てStaneerを創業。現役で人材紹介事業を運営しながら、自社の業務にClaude Codeを組み込む実践を続けています。本ブログの記事は、その実践と社内ナレッジをもとに作成しています。 会社・代表について / noteの実践記事

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